実はヨハネ・パウロ1世が存在した!(カトリック・トリビア)

まじめな教義・聖書の話

幻の教皇 

こんにちは。
 不謹慎なタイトルで申し訳ありません。
 
 ローマ法王は、カトリック信徒にとってとても重要な司牧者です。13億人の信徒をもつカトリック教会の頂点にたつ使徒ペトロの後継者であり、なおかつバチカン市国の国家元首でもあります。
 ですから、宗教的意味のみならず、勢力としても国際社会において無視できない存在と言っていいでしょう。
 カトリック信者でない人にとっても、私の個人的な感覚としては、アメリカ大統領やソ連時代の総書記もしくはロシア大統領に近いくらいの知名度はあるんじゃないかと思います。

 しかし、これ。本当に近年のローマ法王全員、歴代知っているでしょうか?
 実は…、カトリック信者でもある理由で一人抜けてる場合が少なくないんです。

歴代教皇名は…?

 それでは、確認も兼ねて近年の教皇様のお名前を順に挙げていきます。
 現在がフランシスコ教皇。初のラテンアメリカ出身の教皇です(両親がイタリアからの移民なので血筋としてはイタリア人ですが)。気さくでリベラルな思考を持った現代的な教皇様です。
 その前がベネディクト16世。元の名前はヨゼフ・ラッツィンガーといい、高名な神学者、また教理庁長官としても長く勤められました。
 その前がヨハネ・パウロ二世。カリスマ的な人気を誇る教皇様で、冷戦の難しい時期に空飛ぶ教皇(ジョニーウォーカーとのあだ名も)と呼ばれるほど精力的な外交を行い、平和のため尽力されました。
 そして、その前が、、、第二バチカン公会議を大きく進められたパウロ6世、そしてそのさらに前が同じく第2バチカンを開催されたヨハネ23世…、
だと思っている方、いらっしゃいませんか?(筆者は以前そう思っていた)
 実は違うんです。

ヨハネ・パウロとパウロとヨハネの間…

 実は、ヨハネ・パウロ2世の前には、ヨハネ・パウロ1世がいらっしゃいました。
 とても謙遜な方で、自身が教皇に選出されたとき、偉大な前任者パウロ6世とヨハネ23世のお二方の名前をとって、ヨハネ・パウロ(1世)という教皇名を選ばれました。(このような複合名を教皇名とされたのはこの方が初めてです。)
 しかし、教皇在位わずか33日で逝去されています。(急性心筋梗塞)

 1978年のことでした。
この時のことは、バチカン関係者たちにも大きなショックであったようで、ヨハネ・パウロ二世も「2度もコンクラーベが行われた印象深いあの年」等と書かれています。

 そして、前のコンクラーベからわずか1か月後2回目のコンクラーベにおいて選出されたのが、50代という教皇としては異例の若さの(これならすぐ死なないと…?)ポーランド人枢機卿カロル・ヴォイティワでした。
 彼は、前任者ヨハネ・パウロ1世の志をうけつぎ、ヨハネ・パウロ2世と名乗りました。
 つまりは3人の前任者の名前をとったことになります。

幻の教皇みたいになってしまった

 なんだか、さっきから失礼な言い方ばかりしてしまっているのですが、そういうわけでヨハネ・パウロ1世の在位は1か月ちょっとでした。
 1か月の在位だったので、祝賀行事なども計画しているうちに亡くなった、印刷物などもあまり追いつかなかった、という事情があります。
 そのため、古いミサ書や祈祷書などに「私たちの教皇ヨハネパウロ二世」「パウロ6世」「ヨハネ23世」と印刷してあるものはあっても、ヨハネ・パウロ1世と書いてあるものは滅多になく、カトリック信者でも当時リアルタイムで関心を持っていた人でなければ、知る機会がないまま来てしまった、ということも多いのです。
 これが、幻の教皇となってしまった理由です。

ヨハネ・パウロ1世の人となり

 ヨハネ・パウロ1世は、イタリア人で、もとの名をアルビーノ・ルチャーニ枢機卿といいました。
 貧しい生まれから司祭職を志した清貧の司牧者であり、またバチカン内の権力争いにも金銭的な動向にも全く関心を持たない無欲で質素な方だったらしく、かえってそれによって前任者パウロ6世らの信頼を得たと言われています。
 そのような方がこんなにも早く逝去されたことは、本当に残念な事です。

 もっとも、彼が教皇選出後わずか33日間で亡くなったということには疑念もあります。(65歳という微妙な年齢ではあったが、そもそも本当に健康に重大な問題があるとコンクラーベには参加できないはず)。
 そのため、駆け引きのできない彼が、教皇就任直後から実直すぎるやり方でバチカン内の汚職にメスを入れたことによる暗殺説がささやかれることもあるようです。

 そうだとすればカトリック信徒としては、本当に心の痛むことです。
 もっとも、真偽のほどはわかりませんが、人類が地上を旅する以上、どのような場所であっても、それがたとえバチカンであっても、そこに人間の罪が入り込むことは当然で、仕方のないことでもあります。

彼の志を受け継ぐ人々

 さて、そのようなヨハネ・パウロ1世の後を受けたヨハネ・パウロ2世は、信仰をベースに持ちつつも、必要であれば手段として駆け引きもできるような、この世的な賢さにも長けた聖職者であられたように思います。

 もっとも、もしその人気のあまりカリスマ的支配となり、彼個人の決定が力を持ちすぎたとすれば、それは制度としては好ましいことではなかったとも言えるかもしれませんが、核を持った冷戦期という特殊な時代背景を思えば、それは当時の世界にとって大きな善の力だったと言えるのではないかと思います。
 そして次代のベネディクト16世は、ヨハネ・パウロ2世の功績をたたえつつも、そうした長期政権化の例を定着させないように、自身は一定の長さで生前退位を選ばれたようにも思われます。

 それぞれ違う個性をお持ちの歴代教皇方ですが、そこには脈々と受け継がれたバトンがあることが感じ取られます。
 やはりキリストの花嫁たる教会に仕えるという点で目的は一緒なのでしょうね。
 任期が長かった方も短かった方も、その志は途切れることはありません。

今日も読んでくださってどうもありがとうございました。

追記;この記事を書いて予約投稿した後、安倍元総理の銃撃事件が起こり大変衝撃を受けました。権力者の暗殺かというテーマが少し時事的な関連を持ってしまったように見えるかもしれませんが全くの偶然です。
安倍首相のご冥福を祈るとともに、言論の自由に対する挑戦となるいかなる暴力にも反対します。

再追記;当初、安倍元首相の銃撃事件は、選挙演説中ということで政治的な主張かと勘違いしてしまい、「言論の自由への挑戦となるいかなる暴力へも反対」等と書いてしまいましたが、そもそもどうも違う問題だったみたいですね…。
容疑者の人生を知れば知るほど、そして、この銃撃事件によって、今まで抑制されてきたらしい統一教会への報道がなされるようになってきた様を目の当たりにすればするほど、今回の銃撃事件を簡単に否定できない自分がいます…。

コメント

  1. サム より:

    ヨハネ・パウロ1世は、二ヶ月後には列福されますね。
    ヨハネ・パウロ1世は、いくつかの持病があり、特に足は象の足のように腫れ上がり、激痛で靴をはくことすら出来ない日もあったとか。

    側近のシスターや秘書の司教や神父に対し、何度も繰り返し「私はまもなく神に召される」と預言めいたことを言っていたとか。そのたびに秘書たちは「そんなことをおっしゃらないで下さい」と言ったそうですが「神は、なぜ私を選んだのだろう? 私のあとには外国人が来る」「外国人がやって来る」と繰り返すので、「それは誰ですか?」と聞くと「コンクラーベで私の真向かいに座っていた人です!」

    その人こそ、カロル・ヴォイティワでした。(聖ピオ神父も晩年、そのことを暗に預言していましたね) ただ何故ヨハネ・パウロ1世がなぜそれを知っていたのかは謎です。

    • コケッポ より:

      こんにちは。サム様、コメントどうもありがとうございます。
      サム様からいただいたこのコメントがこのブログ初のコメントで、とても嬉しいです。
      実は、ブログ初めて二年以上たちますが、どなたからもコメントをいただいたことがなかったので(本当にコメント欄が機能しているのかと、自分で一回だけコメントを入れたことがあるのみ)、
      普段コメント欄をチェックする習慣がなく、サム様がコメントくださったことにも約一か月の間気づきませんでした。
      それでこんなにも承認と返信が遅くなってしまいました。
      本当に申し訳ございません。

      ヨハネ・パウロ一世のお話、とても興味深いです。
      そのような持病をお持ちで、さらには近く神に召されると不思議な預言めいたことをおっしゃっていたのですね。しかも、コンクラーベで真向かいに座った人、と・・。
      不思議なことで、通常の理屈では説明できないことですが、時に霊性の高い方はそういうことを言われることもあるようで(そういえばピオ神父様もそういうタイプの方だったようですね)、ですから、私の知覚ではわからないけど、それはきっと真実だろうとスっと受け入れられる感じです。
      興味深い情報、どうもありがとうございます。

      サム様、これからもっと気を付けてコメント欄見ますので、お暇なときまた何か書いて下されば、すごく嬉しいです。

    • コケッポ より:

      p.s.それから、コメントを誰かが下さったら、それが私の普段使っているメールアドレスに転送されるように設定をしてみたいと思います。
      ブログを書いていますが、いまだにブログ機能を使いこなしておらず試行錯誤しております。

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