こんにちは。
以前、ダビデ王の女好きぶりなどについて書いたことがあるかと思います。(参照;旧約聖書で笑った話(5)ダビデ王前編~英雄色を好む?、旧約聖書で笑った話(6)ダビデ王後編~卑怯すぎる王、旧約聖書で笑った話(7)~いまいち性格のつかめないダビデ王 …ダビデ王のネタがどれだけ豊富かがわかります。)
そして、ダビデ王にはとても多くの子供がいましたが、彼らもまたいろいろとありました。その中でもすごいのが、実の息子たちであるアムノンとアブシャロム、そしてアブシャロムとダビデの争いでしょうか。
その勃発の理由は笑えるものではないので、その点ではこの笑った話シリーズに載せるのは少しはばかられたのですが、その結末はなんともシュールで笑えるので・・・、載せることにしてしまいました。
それでは、行きます。
争いの勃発~妹への道ならぬ恋と複雑な男心
「ダビデの子アブシャロムに、タマルという名の美しい妹がいたが、ダビデの子アムノンは彼女に恋していた。
アムノンは、妹タマルのために、苦しんでわずらうようになった。」(サムエル記Ⅱ13.1)
これがこれから起こるすべての発端です。もう危険な香りしかしません。
アブシャロム、タマル、アムノン、この3人の母は違ったかもしれません(おそらくタマルとアブシャロムが同母でアムノンは異母か)が、父は確かにダビデですので、彼らは血を分けたきょうだいです。
どうにもできないと思って苦しんでいた王子アムノンですが、ある悪賢い男から入れ知恵をされ、「アムノンは、力づくで彼女をはずかしめ、彼女と寝た」(サムエル記Ⅱ13.14)のです。
はっきり言って犯罪です。しかもアムノンは直後に、いっそうナゾな態度をとります。
タマルと寝た直後、アムノンは、「ひどい憎しみにかられて、彼女をきらった。その憎しみは、彼がかつて彼女に抱いた恋よりもひどかった。アムノンは彼女に言った、「さあ出ていけ」」(サムエル記)。
一体、なぜアムノンは、恋焦がれたはずの妹タマルとの情事(といっても一方的なものですが)あと、彼女へ手のひらを返すような態度をとったのでしょう。
これについて、聖書は何も言っていません。もしかしたら、タマルが助けを求めて他の男の名前を呼んだとかかな…?と私は想像するのですが、本当のところは分かりません。
とにかく、この一件からダビデの息子二人の争いが始まります。
王子アブシャロムが王子アムノンを殺す(ダビデは何もしなかった)
アムノンのしでかした事件の後、タマルは「頭に灰をかぶり、着ていた袖付きの長服を裂き、歩きながら声をあげて泣いて」(サムエル記Ⅱ)いました。
当時、処女である王女たちは、「袖付きの長服」を着ているのが普通だったと言いますから、もはや自分がそうではないということをあらわす行動です。
彼女のアムノンではないほうの兄アブシャロムは、彼女を引き取り、自分の家で暮らさせるも、この出来事によって、兄弟アムノンへ憎しみをたぎらせました。
また、この事柄はダビデ王の耳にも入り、ダビデ王は激しく怒ったのですが、・・・怒っただけで何もしませんでした。どうやらダビデ王は、自分の息子が悪いことをしても、思い切った懲罰を与えることができない人だったようです。
なにもダビデがしなかった間に、次の事件が起こってしまいます。
二年後、周到に準備をしたアブシャロムは、収穫の祝いにかこつけ、アムノンを殺したのです。
それを聞いたダビデは、着物を裂き、地に伏し、激しく泣きました。(サムエル記Ⅱ13.31,13.36)
アブシャロムとダビデの確執
ダビデは、アムノンが殺されたことを嘆き悲しみ、アブシャロムを拒絶しました。多くの人から諫められて、アブシャロムを再度受け入れようとするのですが、しばらくはアブシャロムが謁見に来ても、彼を見ようともしない時期が続きました。
一応は和解するのですが、それでも双方にわだかまりが残ったことがわかります。
一方で、アブシャロムは父ダビデ譲りの、ハンサムで魅力的な人間でした。
「アブシャロムほどその美しさを誉めはやされた者はいなかった。
足の裏から頭の頂まで、彼には非の打ちどころがなく、彼が髪の毛を刈るとき(毎年、年の終わりには、それが重いので刈っていた)、その髪の毛を測ると200シュケルもあった。」(サムエル記Ⅱ15.25)
さらには父同様人望もあり、そもそも今回の事柄は妹への辱めに憤って起こったものですから、アブシャロム自身の欲というものでもありません。
さて、このような王子が偉大な父王から疎まれ、そこに確執が生まれているとなると、そこに人々の思惑もまた絡んできます。
ダビデ王の足をすくってやろうと思っている者たちが王子アブシャロムのもとに集い、そしてそれを危惧するダビデ側の臣下たちも応戦しようとし…、ダビデ王とその息子である王子アブシャロムとの間で、とうとう戦いが起こってしまうのです。
アムノンがアブシャロムに殺されたときに激しく泣いた父王ダビデですが、今度は自分にそのアブシャロムが牙をむこうとしているとわかっても、戦いに出る自分の部下である指揮官たちにこう頼みます。
「私に免じて、どうか若者アブシャロムをゆるやかにあつかってくれ」(サムエル記Ⅱ18)
ダビデの魅力というのは、こういうところなんでしょうか。
アブシャロムの気の毒すぎる死に方
こうして父と息子の間で戦いが起こり、それは多くの死者を出す規模のものとなったのですが、あっけないところで幕切れとなります。
以下、同じくサムエル記Ⅱからです。
「アブシャロムはラバに乗っていたが、ラバが大きな樫の木の茂った枝の下を通った時、アブシャロムの髪の毛が樫の木に引っかかり、彼は宙づりになった。彼が乗っていたラバはそのまま行った。」(サムエル記Ⅱ18.9)
そして、その情けない姿がダビデの部下に見つかってしまいます。これはラバが悪い。
こうして、非の打ちどころのない美しい王子アブシャロムは、頭が樫の木に引っかかって動けないまま、ダビデの部下(指揮官ヨアブ)から討たれることとなりました。
こうして、一連の騒動は突然の終わりを告げます。
豊かな髪の毛の持ち主、というところが意外な伏線でした。
おまけ(その後ダビデは)
以下は、この戦いの後の後日談のようなものですが、ダビデはアブシャロムが殺されたことを聞き、
「我が子アブシャロム、わが子よ、わが子アブシャロム。
ああ。私がお前に代わって死ねばよかったのに。我が子よ、我が子よ」(サムエル記Ⅱ19)
と激しく泣きました。
こうして、王のために勝利をもたらしたはずの部下たちは肩身が狭くなり、戦いに勝利したはずがコソコソ帰還しなければならないという不思議な事態となりました。勝利のラッパどころか、王が喪に服してますから。
さすがにそれはないと指揮官ヨアブはダビデ王に向かって、「あなたのために私たちは戦ったのに、その態度は何ですか。アブシャロムの代わりに私たちが死ねばよかったんでしょ」と、有能な指揮官とは思えない感情的なキレ方をしたりもしました(類は友を呼ぶ)が…、それでも最終的には収めてしまうところが、ダビデのすごいところです。
でも、そもそもは、アムノンがあんなことを起こしたときに、ただ聞いて怒ったというだけではなく、父として王として、なんらかの行動を起こしていれば、ここまでのことにはならなかったかもしれませんから、ダビデに全く責任がなかったとも言えない気がします。
この戦いでは、王子二人だけでなく、少なくとも二万人が死んだということですから、その犠牲は甚大です。
それにしても、それ以上の死者が出る前にこの戦いを終わらせたラバ、乗ってる人が木に引っかかったのに、そのまま行ってしまったラバが本当にいい味を出しています。
今回の投稿の題名を、実はアムノンやアブシャロムよりもラバにしたかった筆者でした。
今回も、読んでくださってどうもありがとうございました。
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